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覚書・確認書・協定書・念書は、名称(表題)だけで法的効力が決まるわけではありません。合意の内容が契約の実質を備えていれば、表題が「覚書」であっても契約書と同じように法的効力を持ち得ます。「覚書だから契約書より軽い」と考えるのは誤りです。
実務では、覚書を①契約締結前の合意事項の記録、②契約締結後の追加事項の合意、③既存の契約条項の変更、の3つの場面で使います。このページでは、各書面の違いと使い分けに加えて、大企業との契約交渉で覚書を活用する方法と、変更覚書のサンプル(Word)をご紹介します。
執筆:業務提携契約専門の行政書士 遠藤祐二(マスター行政書士事務所)
契約書に似た文書には「覚書」「確認書」「協定書」「念書」などがあります。よく誤解されることですが、これらは作成する場面に応じて表題を使い分けているだけです。表題に関係なく、記載されている内容が契約としての実態を備えていれば、契約書として扱われます。
別の言い方をすると、「覚書であって契約書じゃないから、とりあえずサインしておけば?」という考え方で良いということは決してありません。あくまでも中身で判断される、という点に注意しましょう。
| 書面 | 主な用途 | 形式 | 典型例 |
|---|---|---|---|
| 契約書 | 取引・提携の条件を全体として定める | 当事者双方が署名または記名押印 | 業務委託契約書、取引基本契約書 |
| 覚書 | 契約締結前の合意事項の記録/締結後の追加事項/既存条項の変更 | 当事者双方 | 基本契約の有効期間を延長する変更覚書 |
| 確認書 | 協議の結果や合意事項の確認 | 当事者双方 | 打合せで合意した条件の確認 |
| 協定書 | 基本契約で定めた基本的事項に基づく、具体的な運用事項・細目の取り決め | 当事者双方 | 基本契約に基づく運用ルールの細目 |
| 念書 | 一方の当事者が相手方に差し入れる書面 | 一方のみ(差し入れ方式) | 一定の義務や支払の約束を差し入れる書面 |
※念書は一方が相手方に差し入れる形式ですが、それだけで効力が弱くなるわけではありません。約束した内容によっては、差し入れた側を法的に拘束します。
覚書は、一般的に次の3つの場面で作成することが多い書面です。
①まだ契約書は締結していないけれども、双方の合意事項を書面に残しておきたいケース
②契約書を締結した後に、新たに合意事項を追加するケース
③契約書に既に記載された事項を変更するケース
実務で特に多いのは③の「変更覚書」です。元の契約書を作り直すのではなく、変更する条項だけを覚書で合意します。
最近では上場企業といえども倒産することがあります。契約交渉において、「大企業だから大丈夫だろう」と一方的に相手方に有利な条件を飲んでしまうのではなく、理不尽なところはきちんと改めるよう要求することが必要です。
ところが大企業には大企業の事情があります。大抵、社内で承認された雛型契約書があり、「これが社内統一フォーマットだから変更する訳にはいきません!」という理屈で、自社に有利な条件を押し通そうとしてくることが多いのです。どの相手とも画一的・統一的に契約を締結したいという事情はわかりますが、ここで引き下がってはいけません。
そこで、次のようにお願いしてみるのです。
「社内統一フォーマットを変更できないご事情は良くわかりました。では別途覚書をご用意しますので、そちらの方で変更点を記載させていただくということでお願いできませんか?」
覚書には、例えば「基本契約第○条(○○)は、甲乙間においては以下のとおり変更する。」と記載して、変更後の内容を定めます。
契約書そのものの変更ではなく覚書であれば、意外とすんなり応じてもらえることが多いのです。法律的な効力から言えば、契約書であろうと覚書であろうと変わらないのですが、相手方の社内事情を尊重しつつ自社にとって譲れない条件を守る、契約交渉上の有効な選択肢です。交渉の進め方全体については業務提携の契約交渉の進め方で解説しています。
変更覚書は、次の5点を押さえれば難しくありません。
・元の契約を特定する(契約の日付と表題)
・変更する条項を特定する(「基本契約第○条(○○)」)
・変更後の内容を明記する
・それ以外の条項は変更しない旨を確認する
・当事者の住所・会社名・役職・氏名を、元の契約とまったく同じに記載する
下のサンプルは、業務委託の基本契約を変更する覚書の例です。①個別契約の承諾期間を「3営業日以内」から「5営業日以内」に延ばし、②有効期間を「1年間」から「2年間」に延ばす、という2つの変更を想定しています。記載のポイントをWordのコメントで付けていますので、自社の契約に合わせてご利用ください。
①名称ではなく中身で判断されます
「覚書」「確認書」という表題であっても、合意の内容が契約の実質を備えていれば、契約として当事者を拘束します。署名・押印の前に、契約書と同じ目で中身を確認しましょう。
②元の契約との関係を明記しましょう
どの契約(日付・表題)のどの条項を変更・追加するのか、覚書の有効期間が元の契約とどう連動するのかを書いておかないと、後で解釈が分かれる原因になります。
③収入印紙の要否は名称だけでは決まりません
「覚書」という名称だけで印紙税の要否が決まるわけではなく、記載内容によっては課税文書に該当する場合があります。
④電子署名で締結する場合
電子契約で締結する場合も、名称ではなく合意の内容が重要です。電子署名などを利用するときは、締結の方法、相手方の本人確認、締結した記録の保存方法にも注意してください。
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